赤外線カメラを搭載したドローンによる外壁調査について
2024年8月19日

赤外線カメラを搭載したドローンによる外壁調査について
赤外線カメラを搭載したドローンによる外壁調査は、近年急速に普及している新しい建物点検方法です。この技術は、従来の足場を組んで行う目視調査や高所作業車を使った調査に比べ、迅速かつ効率的に建物の外壁状態を確認できる手法として注目されています。
ドローンを用いることで、建物の外壁に直接触れることなく、赤外線カメラの温度感知機能を活用して、外壁内部の異常を検出します。具体的には、外壁のタイルや塗装の浮き、ひび割れ、断熱材や下地材の劣化、さらには漏水箇所まで赤外線カメラによる温度分布の違いとして捉えることができます。これにより、従来の点検では確認が難しい、外壁内部の問題も発見できるというメリットがあります。
ドローンによる外壁調査の手順
①準備作業
まず、点検対象の建物周辺での飛行許可を取得し、安全な飛行ルートを設定します。特に、都市部などでは建物が密集しているため、慎重にルートを決める必要があります。
②飛行と撮影
ドローンを飛行させ、赤外線カメラで外壁を撮影します。高精度のカメラを使用するため、通常のカメラでは捉えられない微細な温度変化や異常を確認することが可能です。ドローンは、広範囲を短時間でカバーすることができるため、大規模な建物でも効率よく点検が行われます。
③データ解析
撮影されたデータをもとに、外壁の温度変化を解析します。温度変化が見られる部分は、断熱材の劣化や水分の侵入、タイルや塗装の浮きなど、潜在的な問題が発生している可能性があります。これらのデータはデジタルで保存され、点検報告書として整理されます。
ドローンを使用した調査のメリット
①コスト効率の向上
従来の外壁調査では、足場を組む作業が必要であり、それに伴う設置・撤去のコストが発生します。また、高所作業車を使う場合も、レンタル費用や人件費がかかります。ドローンを使用すれば、これらの準備作業が不要となり、点検コストを大幅に削減することができます。
②時間の短縮
ドローンは足場を組む必要がないため、短時間で点検作業に取りかかることができます。例えば、足場を組むだけで数日かかるような大規模な点検も、ドローンであれば数時間から1日以内に完了することが可能です。これにより、作業の効率が大幅に向上し、建物の居住者や利用者への影響も最小限に抑えられます。
③安全性の向上
高所での作業には常にリスクが伴います。作業員が直接建物に登る必要がある従来の方法に比べ、ドローンを使用することで作業員が地上に留まり、安全な場所から調査を行うことができます。これにより、作業中の事故リスクが大幅に減少します。
④データの精密さ
赤外線カメラを使用することで、目視では確認できない外壁内部の異常や劣化も捉えることができます。通常のカメラでは表面の異常しか見つけられませんが、赤外線カメラは内部の温度変化を感知できるため、浮きやひび割れ、漏水の兆候を早期に発見することが可能です。これにより、修繕が必要な箇所を正確に特定し、効率的なメンテナンスが行えます。
⑤記録と追跡が容易
ドローンで収集されたデータはデジタル形式で保存されるため、点検後の解析が容易であり、次回の点検時に比較することが可能です。これにより、経年的な劣化状況を追跡し、メンテナンス計画をより詳細に立てることができます。
ドローンを使用した調査のデメリット
①天候や環境条件の制約
ドローンは風や雨、雷などの天候条件に影響を受けやすいため、気象状況によっては点検作業を延期しなければならないことがあります。特に風が強い日には、ドローンの安定性が保たれず、正確なデータを収集することが難しくなる可能性があります。
②周辺環境への影響
ドローンを飛行させるためには、周囲の安全確保が必要です。特に都市部や人が多く集まる場所での飛行は、建物の近隣住民や利用者への配慮が求められます。さらに、飛行に関する法律や規制も遵守する必要があり、これらの手続きが時間と労力を要することがあります。
③外壁表面の詳細な調査が難しい場合もある
ドローンは遠隔で外壁を撮影するため、非常に細かいひび割れや、触診でしか確認できない劣化を捉えることが難しい場合があります。そのため、赤外線カメラによる温度変化が見られない場合でも、必要に応じて従来の目視や触診による詳細な調査を行う必要があります。
まとめ
赤外線カメラを搭載したドローンによる外壁調査は、効率的かつ安全に建物の外壁状態を確認できる新しい技術です。コスト削減や時間の短縮、安全性の向上といった多くのメリットがありますが、天候条件や周辺環境に対する制約、表面の詳細な確認が難しいケースがあるというデメリットもあります。従来の方法とドローンを組み合わせることで、より正確で効率的な外壁調査が可能となり、建物の安全性と寿命を最大限に確保できるでしょう。